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翻訳者には即払い、お客様からは2ヶ月後に入金---アジア翻訳ジャーナル5

日本の信用取引き

報酬

日本経済の強みは信用力を生かした仕事ができることです。企業間の取引では売掛、買掛の期間は普通2−3か月あります。これは翻訳サービスでも同じで、納品後に修正作業を繰り返し、検収が終了してから2か月後くらいに翻訳料金が振り込まれます。

一般企業の場合はまだ早い方で、政府系の案件では修正作業がなかなか終わらず、最初に翻訳を納品してから支払いまでに3か月以上もかかることがあります。これは最近増えている観光パンフレットや外国人生活ガイドなどの自治体案件も同じです。

逆の見方をすると、翻訳作業を終えてから2−3か月間も料金が振り込まれないのです。

信用取引は、細かい支払い手続きをまとめて効率化できるメリットがあります。また、取引のスピードも増します。日本人の翻訳者であれば、信用取引の習慣を理解しており、2か月先でも我慢して待つでしょうし、待っている間も仕事を受けるでしょう。


東南アジアの翻訳者は支払いを待ってくれない

ところが、この信用取引は東南アジアの翻訳者には通じません。黙って2か月も待つということは考えにくいのです。先日、あるタイ人の翻訳者に量の多い仕事を依頼しようとした時には、半額を前払い、残りも納品後すぐに振込むという条件を提示れました。早く支払ってほしい翻訳者を無理に待たせれば、次から翻訳を受けてくれません。英語や中国語をメインにしている日本の翻訳コーディネーターが、この「受けてくれない」という表現を聞いたとき、「それなら他の翻訳者に頼めばいい。翻訳の仕事をしたい人はいくらでもいる」と思うかもしれません。しかし、東南アジア言語は事情が異なります。

東南アジアでは日本語が堪能な翻訳者は、たいていは日系企業か政府機関に務めており、翻訳はアルバイトです。また、南国であり、もともと食べ物には困らないお国柄です。生活は保証されていますので、ガツガツとは仕事をしません。日本の厳しい要望に応えてくれる翻訳者は稀な存在なのです。

当社では常に優秀な翻訳者を探す努力をしていますが、なかなかいい翻訳者に巡り会えません。試しに出した仕事が良かったので、 次の仕事を出すと、期待はずれに終わることがよくあります。優秀な翻訳者を見つけたら大切にしなければなりません。その基本として、仕事が終わったら出来るだけ早く報酬を支払うことがあります。

日本の会社にはルールがあり、支払いは2か月後と決まっていたらなかなか動かせません。無理にお願いして支払ってもらえば、「面倒だから次からはあの翻訳会社には頼まないようにしよう」ということになります。東南アジアで、日本のお客様と現地のネイティブ翻訳者との間のコーディネートをしている当社にとっては、日本からの支払いは2か月待ち、一方で翻訳者にはすぐに支払うという、信用供与の役割もあるのです。ただ、これも仕事が大きくなると、やっぱり辛いです。

2013年4月


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