アジア翻訳のロゴ

タイ語翻訳とトラドス(Trados) ---アジア翻訳ジャーナル7

東南アジア言語も充実、しかし...



Trados Freelance当社は日本のお客様からの仕事が全体の9割を占めます。その中で、翻訳支援ツール、Trados(トラドス)を利用できるか尋ねられることがあります。そこで今回は、タイ語翻訳におけるTradosの利用状況をご紹介しましょう。とは申しましても、しっかりと調べた訳ではありませんので、私の限られた見識の範囲であることをあらかじめご理解下さい。

ご存知のようにTrados は、英国を本拠とするSDL社が開発している翻訳支援ツールです。日本の翻訳業界で働く人なら、実際に使ったことは無くても、名前ぐらいは聞いたことがあるでしょう。翻訳したことをメモリーに記録していって、次に同じ単語や文章が出てきた時に、候補として表示されます。繰り返し同じ表現が出てくる文書の翻訳や用語統一が容易にできるため、特にソフトウェア言語やマニュアルなど技術文書のローカライゼーションに利用されています。

このTradosは、もともと欧州の多言語環境で開発されたもので、多言語翻訳を得意としています。このため東南アジア言語でも、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、マレー語、カンボジア語、ラオス語、タガログ語といった主要な言語に対応しています。


現地物価に比べてかなり高価

翻訳業界では一般的に、プロのフリーランスと本職を持つアルバイトを含めて、在宅翻訳者が中心になって作業をしています。翻訳会社の多くは、社外の翻訳者たちをアウトソースとして使うエージェントなのです。このため、こういった在宅翻訳者たちがTradosを使ってくれないと、Tradosを使った翻訳プロジェクトを遂行することができません。

Tradosは最も廉価な「SDL Trados Sutadio 2011 Freelance」 でも正規ディスカウント価格で66,000円します。これでも日本人の翻訳者にとっては、翻訳会社から「Trados を使ってほしい」と頼まれれば、投資として購入できない金額ではありません。

しかしタイでは事情が異なります。タイでも「SDL Trados Sutadio 2011 Freelance」は、正規ディスカウント価格で21,900バーツします(参照)。これは日本円に換算して6-7万円ほどで、日本とほぼ同じなのです。現地の物価は大卒初任給が15,000バーツほどですから、それを考慮するとタイの価格は日本の20万円—25万円くらいの感じになってしまいます。果たしてタイでは、翻訳者たちがこれだけの投資をするでしょうか。しかも実際に使うとなると有料の1日トレーニングコースを受講しなければ難しいでしょう。

(参照)SDL Trados Sutadio 2011 Freelance タイの正規価格


海賊版横行する環境

タイにはソフトウェア業界にとって大変な問題があります。ソフトウェアの海賊版が横行しており、正規版を使っているのはコンプライアンスを重視する政府機関や大手企業、そしてソフトウェア開発会社くらいです。特に個人の場合はほとんど海賊版を利用しています。ショップでコンピューターを買った時はリナックスしか入っていませんが、すぐ近くのソフトウェアショップに行けばわずか数百円でM社のOSと主要なソフトをまとめて違法コピーしてくれるのです。

A社の高価なクリエイティブソフトも同じです。そのような環境にあることから、在宅翻訳者にTradosを購入してもらうのは簡単ではありません。かといってTradosには海賊版は見当たりません。

では、高額を出してTradosを使っているのはどういうところかと言えば、大手メーカーやソフトウェア開発会社で、日常的に大量のローカライズ作業が発生し、社内スタッフが翻訳しているところでしょう。そういった会社では、Tradosによるコスト削減や品質安定の効果が具体的に現れます。

一方、現地の翻訳会社はどこも小規模で、社内スタッフの作業は翻訳コーディネートと翻訳チェックです。社内でTradosを使っているところはほとんどないでしょう。

ただし、お客様のところでタイ語へのローカライズの仕事がある程度の規模で日常的に発生する場合は、当社でもTradosを購入し、専属の翻訳スタッフを採用して対応することができます。是非、ご相談下さい。

ちなみに、中堅のタイ人翻訳者にTradosについて質問したところ、次のようなメールが戻ってきました。日本語が堪能な翻訳者ですので、そのままコピペします。


水谷様

翻訳が完成したのでお送りします。

Tradosの件なんですが、友達に聞いてみました。翻訳プログラムだそうです。
友達も翻訳の仕事をしていますが、使ったことがありません。
話を聞くとお金が掛かるプログラムらしいです。
プログラムを使って簡単に翻訳が出来ますが、本当に正確に翻訳出来るかちょっと疑問となっています。

ヌッチ


2013年6月


Copyright©2015 Japan HR solutions. All rights reserved.