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プロの翻訳者が少ないミャンマー語---アジア翻訳ジャーナル No.2

2012年は政財界にミャンマーブーム

ヤンゴンの新しいショッピングセンター2012年に日本の政財界から高い注目を集めたのはミャンマーです。それまで半世紀に渡って続いた軍部による封建政治が突然緩められました。東南アジア諸国の中で唯一残っていた軍部独裁国は、民主国家へと歩き出したのです。それまで欧米の厳しい経済制裁が続き、日本政府による本格的な開発援助も、大手企業の進出も困難でした。それが大手を振って進出できるようになったのです。

資源国であり、東南アジアの最も西に位置するミャンマーは、日本にとって経済的にも政治的にも重要な国の一つです。そこにこれまでほとんど進出できていなかった訳ですから、2012年には日本の政財界にミャンマーブームが起こりました。政府関係者の訪問が相次ぎ、日本の企業も視察団を派遣しました。このため、現地ではミャンマー語(ビルマ語)の通訳需要が急増し、日本語が達者な通訳は3か月先まで予約済みといった忙しさでした

このような政財界のミャンマーブームは、翻訳会社の間にも大きな期待を抱かせました。当社にもミャンマー語の翻訳を打診する会社が少なくありませんでした。また、ミャンマー語の翻訳サービスをPRする翻訳会社のWebサイトも増えました。

ヤンゴンのハンタワン中古車市場 ところが、実際にミャンマー語の翻訳の仕事があるかと言うと、まだほとんどありません。2012年のミャンマーブームは、視察ブームであって、まだ投資ブームにはなっていません。進出企業も数える程しかないのです。ミャンマーで現実に動いている日系ビジネスは、日本からの中古車輸入です。しかしこれは、現地での日系企業のオペレーションはほとんどなく、翻訳需要が発生するものではありません。

では、ミャンマー語の翻訳需要は無いのかと言えば、そうではなく、これから日本政府の政府開発援助(ODA)に伴って増えてくるものと考えられます。そして、それらの翻訳案件は、一件当たりの規模が大きそうです。翻訳会社の期待が現実化するのは2013年以降でしょう。ここで大きな問題が出てきそうです。それはミャンマー語の翻訳者の供給体制です。

日本的ビジネス習慣を理解しているか

ヤンゴン外語大に近いおしゃれなヘレダン通りこれまでは、ミャンマー語の翻訳需要は、人道的援助に伴う小さな翻訳案件しか無く、専門的な文書を大量にミャンマー語に翻訳した経験のある翻訳者や翻訳会社は稀でしょう。ミャンマーには日本語教育の高等機関がります。ヤンゴン外国語大学とマンダレー外国語大学で、両校合わせて毎年120人ほどの卒業生を輩出します。両校の人気は高く、入学するには全国試験でトップクラスの成績が必要です。皆が各地の高校の優等生で、日本語の語学力も相当に高いでしょう。

しかし、いくら優秀で、日本語が達者でも、これまでに日本の政府や企業の翻訳案件を受けた経験が乏しければ、日本側の「大変細かいデザイン指示」「参照の利用」「短くて厳しい納期」「エンドレスの修正依頼」「報酬の意外な安さ」「途絶えない連絡」などに応えられるでしょうか。また、公的案件ですと翻訳料金の支払いはプロジェクトの全行程が終了してから となり、場合によっては翻訳開始から数か月も先になりますが、それを理解して待っていられるでしょうか。

ミャンマー人の翻訳者が、こういった日本語能力以外の日本的ビジネス習慣に耐えられないと、翻訳コーディネーターは翻訳者とお客様の間に入って苦しむことになります。また翻訳会社にとっても、 余分なコストが発生して、収益計算が狂います。案件が大きくなるほど、発生し得る問題も大きく、複雑です。ミャンマー語の翻訳案件は、日本のほとんどの翻訳コーディネーター、翻訳会社にとって未知の経験であり、受注には相当な覚悟が必要でしょう。

2013年3月

外務省ビルマ語専門家インタビュー

東京外国語大学によるビルマ語紹介

大阪大学ビルマ語独習コンテンツ


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